心臓リハビリテーション部門
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2022.4.1
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座りっぱなしは、将来の死亡リスクに直結!
テレビ時間を減らし、こまめにからだを動かしましょう

座りっぱなしが、死を招く?!
コロナ禍でリモートワークが増えたり、イベントが中止になったりして、多くの方は外出する機会が減ったことでしょう。テレビやパソコンの前に座りっぱなしでいる日が増えた人も多いのでは?今回はそんなアナタにとって「よろしくない」お知らせです。

♥ 世界有数の「座りっぱなし大国」、ニッポン!

図1は、厚生労働省が作成したリーフレット「座位行動」に掲載されているもので、世界20か国における平日の座位時間を比較しています。は各国の座位時間の中央値で、は下から4分の1、は上から4分の1の位置にあたる人の座位時間をそれぞれ表しています。ごらんのとおり、日本人の座位時間の中間値は約8時間で、20か国の中で一番長いことがわかります1)

図1

なぜ日本人に座りすぎの人が多いのか?職場でのデスクワーク時間が長いから?家庭でのテレビ時間が長いから?・・・など推測されますが、正確なことはわかりません。ただ、日本が世界有数の「座りっぱなし大国」という事実は間違いなく、健康リスクの大きな要因となっています。

♥ 1日に9時間以上座っていると、死亡リスクが跳ね上がる!

生活の中で座りすぎている人は、座りすぎていない人と比較して寿命が短く、肥満、糖尿病、心疾患の割合が高いことがわかっています。昨年、日本人を対象とした日中の座位時間と死亡リスクとの大規模研究の結果が報告されました2)。その研究によれば、仕事および余暇の時間を含む全ての日中の座位時間が長いほど、死亡リスクが高まり、特に1日9時間以上座っている人は、将来明らかに死亡リスクが高くなるとされています(図2)。

図2

高血圧、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病を多く抱えるほどリスクが高くなりますが、必ずしも生活習慣病がない人でも同様の傾向はみられるようです。

222,497名を対象にしたオーストラリアの調査では、座位時間が4時間未満の人に比べ、4~8時間、8~11時間、11時間以上と長くなるに従って、死亡のリスクが高くなりました(図3)。

図3

1日11時間以上座っている人と、1日4時間未満の人を比べると、死亡リスクが40%上がったとのこと3)。 座りっぱなしの最大の原因は、何といってもテレビ時間です。米国の調査では、1日3時間以上テレビを見る人は、それ以下の人よりも8年後の死亡リスクが2倍以上になるという結果が出ています(図4)4)

図4

♥ 運動を頑張っても、座りっぱなしの悪影響はぬぐい切れない

「普段座りっぱなしでも、週末などに運動すればよいのでは?」と考える人もいるかもしれません。しかし、残念ながら、たとえ運動習慣があっても、座りすぎによる死亡リスクは変わらないことが示されています。図5は総運動量と余暇の座位時間が死亡率に与える影響を米国人12万人以上で検証した研究結果の一部です。

図5

運動量が最も少なくかつ余暇の座位時間が6時間以上の群(最も右側の棒)で死亡率が跳ね上がっていることがわかります。それだけでなく、同じ活動レベルの群の中でも、座位時間が増えるほど死亡リスクが高くなっています。図5は女性だけを対象にしたものですが、男性も傾向は同じです。

興味深いのは、身体活動量を増やしても、座位時間が長いままではダメだということ。運動不足と座りすぎは別の問題です。もちろん運動習慣はつけた方が良いのですが、それ以上に、座位時間を短くすることが死亡リスクを下げるためには重要であるといってよいでしょう。

もっと知りたい方へ

座位時間が長いと、運動をしてもリスクは下がらない

■ 座りっぱなしはなぜからだに悪いのか?

長時間座りっぱなしでいることが、なぜ死亡リスクにつながるのか?

ふくらはぎは第2の心臓、と言われるように、下肢の筋肉の収縮によって血流のポンプ機能が働き、循環動態を助けます。長時間座り続けていると、全身の筋肉の70%を占める下半身の筋肉が動かないため、血流や血中の脂質代謝が低下し、血液中の中性脂肪の増加、善玉コレステロールの減少、血中インスリン感受性の低下などを引き起こし、動脈硬化などの悪影響につながるとされています6,7)。その結果、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、肥満、骨粗鬆症などのリスクが高まります。さらに高齢者においては、活動性の低下による認知機能やメンタルヘルスへの影響も指摘されています。

■ 職場や家庭での、こまめな意識と活動が決め手

まず、「座り続けない」と意識することが大切です。長時間の座りすぎをできるだけ減らし、少なくとも1時間に5分程度は、立ち上がって体を動かすようにしましょう。以下に、職場および家庭における座りっぱなし防止策を挙げてみます。

  1. 職場における座りっぱなし対策
    • 1時間に1度は立ち上がってパソコンや書類の前から離れる
    • 用事があるときはメールや内線を使わず歩いていく
    • プリントやコピーをこまめに取りに行く
    • 立ってミーティングや会議をする
    • 通勤車中ではなるべく座らない、また姿勢を正して立つ
  2. 家庭における座りっぱなし対策
    • テレビは本当に観たい番組だけを観て、観ないテレビは消す
    • CM中は立ち上がって家事をする
    • パソコンに向かうときは、30分おきにタイマーをかけてストレッチをする
    • ネットサーフィンは時間を決める
    • 買い物はネットばかりでなくリアル店舗にもでかける

極端な話、同じ座りっぱなしでも、貧乏ゆすりをするほうが健康上はまし、といわれるほど、じっと座っていることは健康に悪いそうです。オフィシャルな場での貧乏ゆすりはお勧めできませんが、特にデスクワークの多い方、コロナ禍で外出の機会が減った方は、とにかく意識して座りっぱなしを減らすようにしましょう。

最後に、厚生労働省が作成した「オフィスでもできる足の運動」をご紹介します(図6)8)

図6

もともとはエコノミークラス症候群予防のためのリーフレットの挿絵ですが、職場や家庭でもきっと役に立つと思います。

参考文献:

  1. リーフレット「座位行動」 厚生労働省e-ヘルスネット
    https://www.mhlw.go.jp/content/000656521.pdf
  2. Koyama, et al. Effect of Underlying Cardiometabolic Diseases on the Association Between Sedentary Time and All‐Cause Mortality in a Large Japanese Population: A Cohort Analysis Based on the J‐MICC Study. J Am Heart Assoc. 2021;10: e018293. DOI: 10.1161/JAHA.120.018293.
  3. Van der Ploeg, et al. Sitting Time and All-Cause Mortality Risk in 222,497 Australian Adults. Arch Intern Med. 2012;172(6):494-500.
  4. Basterra‐Gortari, et al. Journal of the American Heart Association. Television Viewing, Computer Use, Time Driving and All‐Cause Mortality: The SUN Cohort, Volume: 3, Issue: 3, DOI: (10.1161/JAHA.114.000864)
  5. Patel, et al. Leisure time spent sitting in relation to total mortality in a prospective cohort of US adults. Am J Epidemiol. 2010 Aug 15; 172(4): 419–429.
  6. Tremblay, et al. Physiological and health implications of a sedentary lifestyle. Appl Physiol Nutr Metab. 2010;35(6):725-740.
  7. Hamilton, et al. Role of low energy expenditure and sitting in obesity, metabolic syndrome, type 2 diabetes, and cardiovascular disease. Diabetes. 2007;56(11):2655-2667.
  8. リーフレット「エコノミークラス症候群の予防のために」 厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07384.html