心臓リハビリテーション部門
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2022.5.1
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見直そう!食塩の摂りかた ~目指せ減塩生活 vol.1~

新年度を迎えあっという間に1ヵ月が過ぎました。特に5月は何かと心身ともに疲れが出やすい時期で、そんな時こそ運動や食事など普段の生活を見直すことが大切です。

まずは身近なところで食生活を振り返り、今月と来月の2シリーズにわたり、食塩の摂りかたや減塩について触れたいと思います。

♥ 日本食文化を振り返りましょう

和食の多い日本食文化。2013年には「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた食に関する習わしを「和食;日本人の伝統的な食文化」と題してユネスコ無形文化遺産に登録されました1)。図1は農林水産省がまとめた和食の特徴になります。

日本には四季があり海や山といった自然が広がっているため、地域に根差した多様な食材が用いられ、四季の彩を添え、またそれらを最大限に活かす調理技術も備わっているのが特徴です。

図1

そんな優れた和食ですが、ひとつだけ盲点があるとしたら、それは食塩が多いことです。和食には味噌や醤油を使うことが多く、これらは大豆を原料として発酵させているので、とても健康的な調味料と言えますが、食塩含有量が多いのも否めません。

図2に示してあるように、実際に令和元年度の国民健康栄養調査の結果(厚生労働省)2)では、醤油や味噌を頻繁に使う食文化の日本人の1日の食塩摂取量は平均10.1gとされ、2020年に改定された日本人の食事摂取基準(厚生労働省)の目標値の男性7.5gや女性6.5gを大きく上回っているのが現状です。

図1

♥ 食塩の過剰摂取によって血圧が上がる理由

それでは食塩の過剰摂取は体にどのような影響を及ぼすのでしょうか。図3に水道管を例に挙げてその機序をまとめました。

図2

食塩の多いものを食べた後、血液中のナトリウム濃度が一時的に上がります。そうすると体は浸透圧を一定に保つ(ナトリウム濃度を元に戻す)ために水分を取り込もうとします。よく味の濃いものを食べた後にのどが渇くのはそのためです。水分が体内に取り込まれると、その分、体内をめぐる血液量が増えるため血管壁に圧力がかかります。これが血圧が上がる機序です。例えば川が増水した時に流れが速くなって水圧が倍増するのと同じで、循環血液量が増えるということはそれだけ血管に圧力がかかるということなのです。

♥ 食塩の過剰摂取は他疾患の原因にもなる

その他、食塩の過剰摂取はいくつかの疾患に関与しているといわれます。そのひとつに胃がんがあります。その理由として、胃がんや胃潰瘍の原因となるヘリコバクターピロリ菌は食塩の多い環境で繁殖しやすいからです。これらのことから分かるように、食塩の摂りすぎは生活習慣病を助長させる要因になるということです。

現代は外食産業も盛んなうえに、加工品やレトルト食品などを日常的に口にする機会も多いために食塩の摂りすぎになりやすいのが現状です。調味料をかけすぎない、漬物や練り製品のような加工品を減らす、麺の汁を飲まない、など、身近で簡単なことから実践をし、減塩意識を高めていきたいものです。

参考文献:

  1. 農林水産省:「和食」のユネスコ無形文化遺産登録について
    https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich/index.html
  2. 厚生労働省:令和元年「国民健康・栄養調査」の結果
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html